はじめに
営業で扱う商材には大きく分けて「有形商材」と「無形商材」の2つがありますが、営業の仕事に興味のある学生でも有形商材や無形商材という言葉を聞いたことがないという人も多いのではないかと思います。
営業を行ううえで両者の違いを理解しておくことはとても大切なことで、どちらを扱うかによって営業手法も変わってくるのです。
ここでは、営業職を目指している学生のために、「有形商材」と「無形商材」の営業手法の違いややりがい、難しさなどについて詳しく紹介していきます。
【有形商材と無形商材の違い】有形商材・無形商材って何?
学生の中には「営業の仕事なんてどの業界でも同じじゃないの?」と考えている人も多いと思いかもしれません。
しかし、扱う商材が有形なのか、それとも無形なのかによって営業のやり方も変わってきますし、感じることのできるやりがいにも違いがあります。
自分に合った就職先を探すためにも、将来営業の仕事で活躍するためにも、両者の違いを明確に理解しておくことはとても大切です。
どちらの商材を扱うかは業界によって異なりますが、代表的な業界についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
有形商材とは
有形商材とは、その名前の通り「形がある商品、実際に手に触れることができる商品」を意味します。
有形商材を扱う業界としては、住宅やマンションなどの販売を行う「不動産業界」「自動車業界」、電化製品や化学素材などを販売する「メーカー業界」「食品業界」「医薬品業界」などが代表的です。
実物が目の前にあるということで消費者は商品のイメージがしやすく、いかにニーズを掘り起こすかが成果につながります。
また、無形商材と比べると比較的長期間にわたって商品を所有したり、買い替えたりすることが多いため、長期的なフォローアップが必要になるのも有形商材の大きな特徴と言えるでしょう。
ただし、利益率については無形商材と比べると一般的に低くなります。
無形商材とは
有形商材とは逆に、無形商材は「形がないモノ、サービス」を意味します。
つまり、消費者が直接触ることのできない商材を合う買うということになります。
無形商材を扱う業界としては証券や債券などを販売する「銀行業界」、保険を販売する「保険業界」、情報システムやWebサービス、ソフトウェアを扱う「IT業界」、「広告業界」「人材業界」などが代表的です。
無形商材は有形商材と比べると利益率が高いのが大きな特徴です。
たとえば自動車であれば部品の調達や組み立てなどにコストがかかりますが、無形商材は商品を販売するわけではないのでコストを低く抑えることができます。
情報を売るだけならコストはまったくかかりません。また、在庫を抱える心配もありません。
【有形商材と無形商材の違い】有形商材・無形商材の主な業界
有形商材と無形商材を扱う業界にはどのようなものがあるのでしょうか。
主な業界をそれぞれ3ずつ紹介していきます。
有形商材の主な業界
有形商材を扱う業界には「メーカー」「商社」「不動産」などが挙げられます。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
メーカー
顧客は主に代理店や店舗などの法人で、toB営業となります。
メーカーの営業では、自社製品を取り扱うことで顧客にどんなメリットがあるのかを、根拠をもとに論理的に説明する力が求められます。
また、自社の商品に愛着が持つことも活躍できるかどうかのポイントになります。
商社
商社の主な業務は、国内外の売り手と買い手の仲介です。
顧客はメーカーと同様に、主に店舗など法人が顧客となるtoB営業です。
商品の特長を客観的に評価し、提案に生かせるかがポイントになります。
商社では扱う商品数が多く、様々な商品に興味のある人や、流行など市場の情報に敏感な人が向いている傾向があります。
不動産
不動産業界の主な業務は、土地や建物の賃貸契約や売買時の仲介役です。
不動産業界では取り扱う商材により、個人向けか法人向けか異なります。
不動産業界が扱う商材は一回の取引が高額となるので稼ぎやすいという側面もあります。
無形商材の主な業界
無形商材を扱う業界には「コンサル」「保険」「広告」などが挙げられます。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
コンサル
コンサル業界の主な業務は、企業の問題に対しアドバイスを行う業務です。
そのため、営業の行うアドバイスが商材となります。
営業には、問題解決力や様々な業界に関する知識が求められます。
営業においては、信頼関係の構築がカギとなり、またリピーター獲得により安定的に成果を上げられることもあります。
保険
個人向けか企業向けかは商材である保険の内容によります。
営業には、保険商品の知識はもちろん、その人の不安を取り除くために保険の重要性を説明する力が求められます。
また、スキルや知識という面では、仕事をしながら保険などの生活に生かせる知識を身に着けられるというメリットもあります。
広告
広告業界の主な業務は、企業などの顧客に対して、広告の運用のアドバイスを行い、広告の出稿まで行うことです。
広告業界の営業には、流行など情報に敏感であること、広告に関する知識などが求められます。
また、広告業界の営業を通じて、様々な業界の人と人脈を広げられるなどのメリットもあります。
【有形商材と無形商材の違い】商材別の営業のやりがいや難しさ
「顧客のニーズを聞き出して、そのニーズを満たすような商材を提案し、購入してもらう」というのが営業職の基本的な仕事内容です。
この点については有形商材を扱う場合でも無形商材を扱う場合でも変わりはありませんが、違いももちろんあります。
ここでは有形商材を扱う営業職と無形商材を扱う営業職の違いを紹介していきます。
有形商材営業のやりがいや難しさ
有形商材を販売する営業の仕事にはどのような特徴があるのでしょうか。
有形商材営業ならでは手法や仕事のやりがい、無形商材営業にはない仕事の難しさなどについて詳しく見ていくことにしましょう。
やりがい:お客さんの反応が早い
有形商材を扱う営業の一番の特徴は、顧客の反応をその場でダイレクトに感じることができるということでしょう。
商材が目に見えることや直接触ることができるという特性上顧客の反応も非常に早く、また商品を購入したときの喜びも無形商材よりもダイレクトに伝わってきます。
営業職にとって、顧客の笑顔や喜ぶ姿を見ることができるというのは、何よりもやりがいを感じることができる瞬間でしょう。
ただし、逆に言えば形のある商材ということで顧客の好みも如実に出やすいという一面もあります。
顧客のニーズとは異なる商材を勧めてしまうと、話も聞いてもらえずに一目で断られてしまうリスクがあるのは有形商材営業の難しさ、怖さと言えるでしょう。
難しさ:顧客のニーズの把握が重要となる
有形商材は形があって触ることができるので、営業をするときに顧客に商品のイメージを持ってもらいやすいという特徴があります。
住宅であれば内覧会に招待する場合や自動車であれば実際に試乗して乗り心地を体験してもらうなど、商品イメージを活用するのは有形商材を販売するための有効な手法となります。
また、「この商品を購入すれば、こんなに良いことがありますよ」「こんなに生活が便利になりますよ」といったように、購入後の姿をイメージしてもらいやすいのも特徴です。
有形商材の場合は一般的に品質が一定なので、ニーズを把握しやすいというのも特徴でしょう。
購入した顧客の感想をフィードバックすることで新製品の開発に寄与できるのも営業の仕事のやりがいです。
無形商材営業のやりがいや難しさ
商材を目で見て確認することのできない無形商材には有形商材にない仕事の難しさがあることは事実ですが、利益率が高いので大きなやりがいを感じることのできる商材でもあります。
ここでは無形商材の営業の特徴について詳しく見ていきます。
やりがい:高度なスキルが身につく
無形商材は形がないので顧客がサービスをイメージしにくいという特徴があります。
有形商材のように直接的に商品の良さをアピールすることができません。
たとえば情報システムを導入しようとしている企業があって、その候補がいくつかある場合、その中から自社のシステムを選んでもらうためには何が必要かといえば、イメージよりも顧客のニーズを満たしているシステムかということが重要になります。
顧客のニースを汲んで提案を行うのは非常に難しい作業ですが、だからこそ売上につながったときには大きな喜びであり、大きなやりがいを感じることができるでしょう。
有形商材と比べると自分のスキルの高さや経験を活かしやすいとも言えます。
難しさ:お客さんから信頼をもってもらう必要がある
無形商材営業は形のないものを販売するからこそ、顧客との信頼関係が非常に重要です。
有形商材であれば商品をイメージしやすいので即決で購入を決める顧客も多いですが、金融商品や情報サービス、人材サービスといったものはイメージが湧きにくいため、即決するケースというのは稀です。
顧客が納得するまで粘り強く商品の良さをアピールし、信頼関係を築きながら長い時間をかけて契約に至るというのが一般的となっています。
また、アフターフォローも重要になってきます。
サブスクが一般的になってきたことでサービスを特定の期間だけ利用するというケースも増えてきたため、カスタマーサクセスによって長く使ってもらう働きかけが求められるからです。
サブスクやカスタマーサクセスについては、以下の記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
どっちのほうが難しいの?
有形商材と無形商材、どちらの営業が難しいかというと一概にこちらが難しいとは言い切ることができません。
個人を対象にするのか、企業を対象にするのかによっても、難易度は変わります。
無形商材のほうが実際に目に見えるものではないため、売り込むのが難しい気がします。
しかし、無形商材についてを具体的に説明できるスキルさえあればこれはカバーできるはずです。
有形商材は目に見えるものなので、まずお客さんにどんなものなのか見てもらうことは簡単です。
しかし、見た時点で興味を失ってしまったらお客さんは買う意欲がなくなってしまいます。
早い時点で興味を失われてしまう可能性があります。
何が魅力的なのか、うまくアピールしてお客さんの興味を惹きましょう。
また、有形商材と無形商材を売る際に、BtoBなのかBtoCなのかでも難易度が異なります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
https://eigyo-shukatsu.com/article/305993
どっちのほうが難しいの?
有形商材営業と無形商材営業、それぞれの特徴ややりがい、難しさなどについて紹介してきましたが、将来営業の仕事をしたいと考えている学生が一番気になるのは「どっちのほうが難しいの?」ということではないでしょうか。
それによって進むべき業界が変わってくるという学生もいるでしょう。
これについては、一概にどちらが難しいと断言できるものではありません。
人によって向き・不向きがあるからです。
【有形商材と無形商材の違い】商材別に見る営業職の向き不向き
有形営業、無形営業には向き・不向きがあると言いましたが、ではどのような人が有形商材営業に向いていてい、どのような人が無形商材営業に向いているのでしょうか。
ここではそれぞれの営業について向いている人の特徴を紹介していきますので、どちらを選ぼうか迷っている学生はぜひ進路決定の参考にしてください。
有形商材営業に向いている人
営業職としてメーカーや商社、不動産などの業界へ進みたいと考えている場合は有形商材を扱うことになります。
有形商材営業に向いている人の特徴にはどのようなものがあるでしょうか。詳しく見てみましょう。
商品に詳しくなれる人
有形商材は商材の実物が目の前にあって直接触ることもできるので、商品の性能やデザインなどを把握しやすく、また営業と顧客の間で共通の認識を持ちやすいのが特徴です。
そのため、商品自体が魅力的なものであれば、それだけでも購入してもらえることがあります。
また、購入を迷っている顧客に対しては余計な情報をいろいろと説明するよりも、商品自体の良さや使用することにより得られるメリットなどを素直に伝えたほうが成果につながりやすいという特徴があります。
このような特徴から、自分の扱う商材を好きになり、その商品の特徴や性能などについて情報収集するための努力を惜しまない人は有形商材の営業の仕事に向いていると言えるでしょう。
行動力のある人
行動力があるということも、有形商材の営業に向いているかどうかを判断するための重要なキーワードとなります。
無形商材の場合は取引されるものが情報であったりデータであったりと、実物が目に見える実体として存在しないわけですが、有形商材の場合は目に見える形で商品が存在するのです。
先ほども言ったように、有形商材は実物を見てその良さを確認してもらうことが購入してもらうための重要なポイントになるため、実際に顧客の住まいや職場などに訪問して営業活動を行うことが求められることになります。
商品をたくさんの人に見てもらうためには、そして商品の良さを知ってもらうためには、行動力は必要不可欠な資質と言えるでしょう。
好きな商材を扱いたい人
○○という商品が好き、家を売りたい、など特定の商品を魅力に感じ、売りたいと思っている人も有形商材の営業に向いています。
自分が感じている魅力やメリットを具体的にお客さんに伝えるスキルがあれば、営業の強みになります。
商材のことをよくわかっているので、いろいろな質問にもスムーズに答えられるでしょう。
また、好きだからこそ、その商品についての知識を吸収しやすいなど、自分の熱意を仕事に活かせるでしょう。
商品についての理解を深めることも苦にならず、仕事を楽しみながら進められるのがメリットです。
説明力
一般的な商品とどのように違うのかや、リニューアルをした際にどう変わったのかなど、商品のポイントを分かりやすく、納得できるように説明する必要があります。
商品の魅力をより効果的に伝えるために説明力は必須です。
無形商材営業に向いている人
金融機関やIT業界、広告業界、人材業界などで営業職して働くことを目指している学生は、就職したら無形商材の営業が主な業務となります。
無形商材営業に向いている人はどのような特徴があるのか、進路を定める前に確認しましょう。
人の話を聞くのが得意な人
無形商材は有形商材とは違って商材のイメージを持ってもらうことが難しいため、魅力を伝えるためには、「いかに顧客の求めるニーズに沿ったものであるのか」ということをアピールしなければなりません。
たとえば、月々の保険料が安い保険を探している顧客に対して、サポートは手厚いけれど保険料の高い商品を勧めても買ってもらえないからです。
そこで重要となってくるのが、会話の中から顧客の求めているものが何なのかを聞き出すためのヒアリング力です。
「この人はどんな悩みを抱えているのか」「この企業の課題はどんなところにあるのか」を正しく理解し、その悩みや課題を解消できる提案ができる人は無形商材営業に向いていると言えるでしょう。
論理的に説明できる人
商材の良さを論理的に説明できる人も、無形商材営業に向いているでしょう。
これまでも繰り返し言ってきましたが、無形商材は形がないので、その良さを伝えるのが有形商材よりも難しいという特徴があります。
特に顧客が商材について詳しい知識や経験がない場合、説明してもなかなか内容を理解してもらえません。
そのような顧客に良さを理解してもらうためには、「このサービスはここが優れています」と結論だけを伝えるのではなく、その結論に至るまでの根拠や具体例なども挙げて説明することが重要であり、そのためには論理的思考が求められるからです。
まめな人
無形商材はお客さんへの継続的なサポートが求められる場合が多いです。
そのため、お客さんと定期的に連絡を取ったり、寄り添ったりという姿勢が求められます。
連絡をまめに取れて、人との交流に積極的な人は無形商材の営業に向いていると言えるでしょう。
相手が何を不安に思っているかなどの相手の気持ちを察することが得意な方にも向いています。
逆に言うと、まめな連絡が苦手な人はなかなか成績が伸びずに苦労してしまう可能性があります。
稼ぎたい人
有形商材は制作のための材料費や輸送費など様々なコストがかかる反面、無形商材はあなたの提案やアドバイスが商材となるため、企業にかかるコストが比較的少ない傾向があります。
そのため、売り上げから引かれる金額が少なく、無形商材のほうが手取りが多くなる傾向があります。
また、あなたの営業そのものが商材となるため、商材に依存しない営業力を鍛えることができます。
【有形商材と無形商材の違い】商材は一つの見方
営業はあらゆる業界に存在する職種ですが、すべての業界や企業で同じ働き方や能力が求められるわけではありません。
法人相手に商売を行うBtoB企業なのか個人を相手にしているBtoC企業なのかによって営業の手法は変わってきますし、扱う商材が有形か無形化によってももちろん違ってきます。
就職先の企業を選ぶときには、自分の特徴や長所がどのような業界や企業で活かせるのかを見極めることが大切です。
こちらの記事も読んでもらうとより理解が深まるでしょう。
まとめ
ここまで有形商材営業と無形商材営業の違いについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
一口に営業といっても扱う商材によって仕事のやりがいや難しさ、求められる資質に違いがあることがわかっていただけたと思います。
営業の仕事に興味を持っている学生も多いと思いますが、自分に合った就職先を見つけるためにも、そして、就職してから能力を最大限に発揮するためにも、業界ごとの営業職の違いをしっかり理解するようにしましょう。