はじめに
営業職は個人にアプローチする場合と法人にアプローチする場合に分けられます。
それぞれ必要なスキルは異なるとともに、悩みの内容も異なります。
個人営業は生活において身近なことからイメージしやすいものの、法人営業は日常生活と密接でない分イメージしにくい部分もあるでしょう。
そのため、具体的なイメージをもたないまま法人営業の道に進んでしまい、後悔につながることも珍しくありません。
法人営業には、新規開拓をする新規営業と、既存顧客に対するルート営業があります。
今回は法人の新規営業にきつさを抱えている人に向け、法人営業がきついとされる原因や対処法を紹介していきます。
【法人営業がきつい】法人営業の仕事とは
法人営業とは、個人ではなく法人を顧客とする営業職のことです。
営業職といえば個人にアプローチする個人営業のイメージが強いため、企業や団体にアプローチする法人営業についてはよく知らないまま職に就いた方も多いのではないでしょうか。
しかし法人営業がきついと感じる理由を深掘りするためには、まず法人営業についてくわしく知る必要があります。
なぜなら、法人営業について知ることで、自分がきついと感じているポイントに気づきやすくなるからです。
ここでは、法人営業の仕事内容や個人営業との違いを見ていきましょう。
法人営業の仕事内容
法人営業の主な仕事は、企業や団体に自社の商材を紹介し、購入を促すことです。
既存顧客のフォローを行い、新商品への更新や追加サービスを提案するのが業務の中心ですが、ときには新規顧客を獲得するために電話やメールで法人にコンタクトを取ったり、飛び込み営業を行ったりすることもあります。
また、契約を得るために他社とコンペやプレゼンで競ったり、酒席で接待をしたりする場合もあります。
商材は有形商材と無形商材に分けられ、有形商材はパソコンや複合コピー機などのオフィス機器、工業用機械など、無形商材はITソフトやコンサルティングサービスなどが代表格です。
法人営業の特徴として、無形商材の割合が高いことをあげられます。
これは、企業などの法人では品物よりも業務効率化や売り上げアップなどの解決策を求めている場合が多いためです。
個人営業との違い
法人営業が個人営業と大きく異なる点は、商材購入や契約の決定権をもっているのが担当者ではなく、所属長などの責任者であることです。
個人営業では、契約の決定権をもっている顧客本人にプレゼンを行うことができます。
しかし法人営業の場合、プレゼンを行う相手は実際に商材を使う担当者ですが、一般的に契約の決定権は所属長や上席、社長などがもっています。
そのため、担当者へのプレゼンが好感触でも、決定権者によって契約が却下される可能性もあるかもしれません。
また、所属長など複数の決定権者に話を通すために商談が長引いたり、プロセスが複雑になってしまったりする傾向もあります。
個人営業と比較した場合のメリットは、顧客の休みに合わせるため土日や祝日に休めるケースが多く、年収も個人営業に比べて高い傾向にある点です。
【法人営業がきつい】法人営業がきつい5つの理由
一般的に営業職というと個人営業のイメージが強く、きつい仕事だと認識されています。
しかし、法人営業も個人営業と同様に、楽な仕事ではありません。
一口に営業職といっても個人営業と法人営業があり、それぞれ性質は異なります。
ただ、仕事の本質は変わらないことから、まったく違う悩みを抱えるわけではありません。
ここでは、法人営業がきついといわれる理由を5つ紹介していきます。
現在、法人営業で悩みを抱えている方は、自身の悩みの原因を知ることで解決策も見つかります。
ノルマがきびしい
営業職にとって「ノルマがきびしい」という悩みは切っても切り離せません。
成績が売り上げとして目に見えてしまうため、大きなプレッシャーとなります。
さらに、法人営業では扱う金額も高額になるため、簡単に契約してもらうことは困難です。
つまり、契約単価が大きいため、どうしてもノルマが大きくなってしまうのです。
個人営業のように単価の小さいものであれば、付き合いなどを理由に売り上げを確保できる可能性もありますが、法人営業ではそうもいきません。
売れれば大きい法人営業ですが、売れなかったらゼロなのです。
また、個人営業であれば、個人の判断で商品の購入を決められます。
しかし、法人営業の場合は担当者の独断で決められないため、契約までに時間を要する場合もあります。
休日対応が発生する場合もある
法人営業の場合、顧客の仕事に合わせて営業活動を行います。
そのため、自分が休日であっても、顧客が営業中であれば関係なしに仕事が舞い込んできます。
顧客の休みと自分の休みが一致しない場合、自分が休日の際にも問い合わせや電話がかかってくる場合もあるのです。
要請があれば、たとえ休日であったとしても予定のつく限り、対応しなくてはなりません。
仮に呼び出しがなかったとしても、いつ連絡が来るかわからない状況のため、精神的にリフレッシュできない人もいます。
家庭をおもちの方であれば、家族とのかけがえのない時間も切り崩すことになるでしょう。
営業という仕事に、「人生の大切な時間をかける覚悟がなくては務まらない」と言っても過言ではないでしょう。
残業が多い
残業が多いという悩みも営業職における宿命といえます。
法人営業であれば、なおさら残業はやむをえません。
なぜなら、顧客となる法人は本来の業務があり、その傍らで営業担当の相手をしなくてはならないからです。
顧客からすれば、もちろん本来の業務が最優先になるため、営業はあと回しにされてしまいます。
場合によっては、顧客の業務時間が終わってからの商談になるため、残業になってしまうのです。
法人営業は顧客に合わせて仕事をする必要があるため、働く時間は長くなってしまいます。
事務職のように毎日の仕事量がある程度一定であれば、1日の中での進捗具合を調整しやすいため、残業を減らすこともできます。
しかし、顧客に合わせなくてはならない法人営業は、自分の都合で動けないというジレンマも抱えることになってしまうのです。
接待が多い
営業職においてもっとも大切なことは、顧客とのパイプを作ることです。
パイプを作るために接待は必要不可欠であり、会社も多少の経費がかかったとしても、必要経費として処理します。
接待自体は減少傾向にあるものの、業界によっては接待を必要としているところもあります。
美味しいものを食べられたり、楽しい思いができたりするようにも思えますが、実際は良いものでありません。
接待が多いと、通常の業務に加えてこなさなければならない業務も多くなり、精神的にきつくなってくるのです。
もしかすると、接待される側であれば、いい思いもできるかもしれません。
しかし、主催側は他方に気を使わなくてはならないため、非常に大きなストレスとなるのです。
人間関係が合わない
人間関係の悩みは、どの業界や職種においても共通の悩みであるといえます。
個人として動くことの多い営業職であっても例外ではなく、人間関係の悩みは大きな悩みとなるのです。
上司と人間関係がうまくいかないと、困ったときのアドバイスやサポートが必要なときにつらくなってしまうものです。
もし良い上司に恵まれれば、多少つらいことがあったとしても乗り切れるでしょう。
しかし、上司は選ぶことができません。
こればっかりは運に左右されてしまいます。
在職している上司の中から、どの上司について行くのかを冷静に見極め、自分にとってプラスとなるように行動しましょう。
ただ、上司ばかりに気を取られていて、部下に目が届かないと反発をもらってしまいます。
部下に対してもしっかりとフォローをし、人間関係を乱さない努力が必要です。
【法人営業がきつい】法人営業に向いている人の特徴
営業成績の良い同僚に対して「自分と同じ仕事をしているはずなのに、なぜあれだけ契約を取れるのだろう」「楽しそうに仕事をしているな」と感じたことがあるかもしれません。
法人営業で実績をあげたりイキイキと仕事をしたりしている人は、もともと法人営業に向いている人なのかもしれません。
法人営業に向いている人の特徴として、「社交性が高い人」「発想力が豊かな人」「メリハリのある人」「メンタルが強い人」の4つがあげられます。
なぜこれらの特徴をもつ人が法人営業に向いているのか、理由を解説します。
社交性が高い人
法人営業は、社交性が高い人に向いています。
法人営業とはいえ、商談の際に関わる担当者は個人ですから、人と人との付き合いになることに変わりはありません。
担当者と良好な関係を築くためには、会話を弾ませるための社交性が求められます。
また、担当者との何気ない会話から顧客のニーズを引き出して、新たな商機につながる可能性もあるのです。
法人営業では1つの商談でも担当者や責任者など複数の人と交渉する場合もあり、さまざまな人と接するため、社交性が高く、どんな人とも分け隔てなく付き合える人は法人営業に向いていると言えます。
特に飛び込み営業がある場合は、初対面の人とも和やかに会話のできる人が向いているでしょう。
反対に、内向的な人や人見知りが強い人には負担の大きい仕事です。
発想力が豊かな人
発想力が豊かな人も、法人営業に向いています。
顧客との商談の中で「ここを自社向けにカスタマイズしてほしい」「こういうサービスもしてほしい」など、要望を打診されることがあります。
こうしたときに毎回「一旦持ち帰って検討します」と返答していては、商機を逃しかねません。
その場で顧客の要望に応えるためには、商材に関する知識だけでなく、発想力も必要です。
自社商材の対応可能な範囲で顧客の要望に応えるためにはどうしたら良いか、別の方法で顧客のニーズを満たすことはできないか、その場で発想して提案できれば、商談がスムーズに進む可能性が高いでしょう。
一方、どんなに商材に関する知識が豊富でも、それを応用して新たな発想を生み出すのが苦手な人は、商機を逃してしまいがちです。
メリハリのある人
仕事と私生活の区切りをはっきりつけられる、メリハリのある人も法人営業に向いています。
法人営業では業務量が多く、顧客との関わりも深いため、公私の区別がつかなくなってしまいがちです。
業務時間外に営業資料を作成して長時間労働になったり、接待のために休日を潰してしまったりすれば、体調を崩してしまいます。
また、仕事でのプレッシャーやストレスを私生活にも持ち込んでしまうと、休んでもリフレッシュができず、メンタルにも悪影響をおよぼしかねません。
体調やメンタルが不調では、当然仕事にも影響が出てしまうでしょう。
オンとオフの切り替えをはっきりして、業務時間内に全力で仕事に取り組めるメリハリのある人のほうが、法人営業に向いています。
メンタルが強い人
メンタルが強い人も、法人営業に向いています。
法人営業は、ノルマを課されたり初対面の人と話したりするため、プレッシャーや緊張を強いられることの多い職種です。
商談がうまくいかなかったり、飛び込み営業で相手に迷惑そうな態度を取られたりして、気持ちが落ち込むこともあるでしょう。
しかし、たとえプレッシャーや気分の落ち込みを感じていたとしても、顧客の前では堂々と振る舞わなければなりません。
こうした負の感情を仕事へのエネルギーに変えられる強いメンタルをもっている人ほど、法人営業に向いていると言えます。
反対に、プレッシャーや緊張に弱く、顧客の前でもおどおどした態度を取ってしまう人や、落ち込んだ気分を引きずってしまう人は法人営業向きとは言えません。
【法人営業がきつい】法人営業がきついときの対処法
法人営業という職種は決して楽な仕事ではありません。
もちろん、きついと感じてしまうこともあります。
ただ、きついという気持ちをずっと抱えたままで仕事を続けてしまうと、精神的にも疲弊してしまうため、なるべく早い対処が必要です。
仕事に対してつらいと感じたときは、無理をせずに適切な対処をしましょう。
精神状態が変化することで、仕事に対する感情も変化することがあります。
以下で紹介するいくつかのことを実践し、状況改善に努めてください。
現在の職場に入社した初心に立ち戻る
仕事がきついと感じてしまったとき、入社した初心を思い出すと状況が改善されることもあります。
勤め始めたときはモチベーションが高く、つらいと感じていなかったのにもかかわらず、時間の経過とともにモチベーションが低下し、負の感情が大きくなってしまっている可能性もあります。
なぜあなたが今の仕事を始めたのか見つめ直してみることで、当初のモチベーションを取り戻せるかもしれません。
法人営業を始めた理由はさまざまあると思います。
しかし、仕事が忙しくなってきたり、精神的に追い詰められたりしてしまっていると、仕事を始めた理由は見失いがちになるものです。
一度原点に立ち返り、仕事をする目的を考えてみましょう。
同じ仕事をするにしても、モチベーションの高さ1つで感じる感情は大きく異なります。
仮に法人営業を続けるのであれば、モチベーションの高さは結果にも影響を及ぼすことでしょう。
充実した社会人生活を精神的に安定して送るためにも、定期的に初心を思い出してください。
成果をあげること
法人営業がつらいと感じる原因はいくつかあります。
それら負の感情を上回る達成感や、充実感を味わうことができれば、仕事に対する考え方も変わってきます。
法人営業の場合は結果が数字として見えるため、営業成績として成果をあげることで負の感情を払拭できるでしょう。
成果をあげて、会社に貢献できるとおのずと仕事は楽しくなってくるものです。
成果をあげると周囲からも認められている実感を得られ、さらに結果を出したいという意欲にもつながります。
営業の仕事が楽しくなれば、ほとんどの悩みは解決できるでしょう。
法人営業で成果をあげるためのコツは以下の記事で紹介しています。
仕事に対するモチベーションを高めるためにもぜひ参考にしてください。
スキルを身につける
法人営業をきついと感じている人の中には「契約がなかなか取れない」「頑張っているのに成果があがらない」と感じている人も多いのではないでしょうか。
こうしたケースでは、営業スキルを身につけて営業成績が向上すれば、きつさを払拭できる可能性があります。
まずは法人営業スキルを向上させるためのハウツー本を読んだり、営業セミナーを受講したりして、スキルを身につける努力をしてみましょう。
営業成績の良い同僚や上司にコツをたずねたり、可能であれば営業先に同行させてもらい、営業の様子を見せてもらったりするのもおすすめです。
営業スキルを身につければ自分自身の成長につながるうえ、営業成績が向上すれば仕事にやりがいを感じられ、きつさを払拭できます。
しんどいときは転職も視野に入れよう
スポーツや勉強と同様に仕事であっても向き不向きはあります。
特に法人営業の仕事は、適性が必要とされる仕事の1つでもあるのです。
さまざまな手段を駆使してもモチベーションが上がらない場合や、つらい・しんどいと感じてしまう場合は、転職も選択肢の1つになります。
転職は最後の手段ではあるものの、どうしても法人営業職がつらい、仕事は続けたいけど今の職場がつらい場合は転職を視野に入れましょう。
苦手な仕事を無理して続けてしまったがため、精神的に疲弊してしまったのでは意味がありません。
生活のために仕事をしているのであれば、仕事で生活に支障をきたしてしまうのは本末転倒だといえるでしょう。
以下で営業職の転職事情について紹介しているので、転職を視野に入れている方は参考にしてください。
【法人営業がきつい】法人営業からの転職事情
法人営業は、その仕事の性格から出入りの激しい職種です。
つまり出て行く人が多い分、転職者が多いことを意味します。
前例が多くあることから比較検討もしやすく、自分自身が転職市場において、どのような立場なのかを理解しやすいといえるでしょう。
自分の価値を知ることは転職において最初にするべきことであり、自分の能力や経験を客観的にとらえなくてはなりません。
難しいようにも感じますが、転職事情を理解して満足のいく結果につなげてください。
同業種への転職
営業職はどんな会社にとっても必要とされる職種です。
仮に同業種であれば、業界についての情報ももち合わせていることから、優位に仕事を進められるでしょう。
たとえ会社が変わったとしても業界が同じであれば、やることは同じです。
前職で成果をあげていた人材であれば、むしろオファーがくるほどです。
また、営業職は出入りが激しい職種であるため、営業職の求人は多くなっています。
このことも、営業職から営業職の転職の難易度が低い理由になります。
特にIT・Web系の法人営業職は成長産業のため、優良企業が多い傾向にあるのです。
法人営業は個人営業とは異なったスキルや経験が必要になるため、個人営業をしてきた人材とは大きな差別化がはかれます。
異業種への転職
営業職は、営業する商品についての知識を必要としますが、それ以上に顧客対応やPDCA力が評価される職種でもあります。
つまり、学べば習得できる知識とは違い、法人営業としての経験や仕事の進め方が大きな武器になるのです。
そのため、法人営業経験者は未経験でも、異業種に転職できるケースが多い傾向にあります。
営業職に必要とされるコミュニケーション能力や対人能力は、簡単に習得できるものではありません。
さまざまな経験から培われるそれらの能力は、かけがえのない武器となります。
実際、ほとんどの仕事は知識だけでできるものではありません。
仕事の多くが人と関わりながら進めて行くものであるため、コミュニケーションスキルの高い人材は重宝されることでしょう。
転職の際はエージェントを利用しよう
転職を決意したら、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
転職エージェントは、自己分析や業界・企業研究といった転職活動の基礎作り・企業とのマッチング・面接のアドバイスなど、転職全般のサポートをしてくれるサービスです。
特にこちらの転職エージェントは、営業職に特化したエージェントサービスであるため、営業職への転職を考えている方にうってつけと言えます。
プロの力を借りて、よりスムーズに、より自分に適した転職先を見つけましょう。
まとめ
法人営業はほかの営業職と同様に、きつい仕事であることは間違いありません。
しかし、大変さゆえにほかでは得られない達成感を得ることができます。
また、特殊な業種であることから、同じ営業職であっても個人営業とは大きく異なる経験ができます。
ただ、仮につらいと感じてしまったときには、モチベーションが高まる工夫をしましょう。
それでも無理なときは、転職を視野に入れて行動するべきです。
後悔をしない生き方の選択をするためにも、自分の気持ちに正直な行動をしてください。