はじめに
キャリアアドバイザーは転職希望者に対し、さまざまなサポートをする転職活動のプロフェッショナルです。
そのサポート内容は多岐にわたり、転職活動の際にはその存在が大きな力となってくれます。
しかし、そんなキャリアアドバイザーの仕事は「きつい」と言われるケースも少なくありません。
そこで今回はキャリアアドバイザーの仕事が大変な理由と、その対処法を紹介します。
現在仕事がつらいと考えているキャリアアドバイザーの方や、キャリアアドバイザーを目指している方は参考にしてみてください。
キャリアアドバイザーの仕事内容
キャリアアドバイザーは、転職希望者の転職が成功するまでの間、転職に関するさまざまなことをサポートする仕事です。
「キャリアアドバイザー」に似た呼び名で、「キャリアコンサルタント」と呼ばれることもありますが、これは、国家資格を持っている人だけの名称です。
仕事内容は、職業の選択・職業生活設計・職業能力の開発や向上など、キャリアアドバイザーと比べてさらに領域が広がります。
それでは、キャリアアドバイザーは具体的にどんな仕事をしているのかをくわしく解説していきます。
面談
転職希望者が転職エージェントに登録をすると、まず面談を行い、転職理由・希望の職種や業界・今までの経歴などをくわしくヒアリングしていきます。
転職希望者との面談で、一人ひとりを客観的に分析し、 転職に対する条件や希望、不安などすべてを打ち明けてもらうことが大切です。
そのためには一人ひとりにしっかりと寄り添い、ときには雑談を交えるなど、場を和ませながら面談を進めていくことで、次第に心を開いてくれます。
面談の場で転職希望者が少しでも偽ってしまうと、希望の企業に出会えなかったり入社後にミスマッチを感じてしまったりして、早期退職のおそれもあるので、悔いのない転職を実現させるためにも正直な面談が必要になるというわけです。
キャリアアドバイザーの性格や転職希望者の適性などによっては、ヒアリング内容や紹介する求人も多岐にわたります。
求人紹介
面談の中である程度、転職希望者に対する方向性が見えてきたら求人紹介を行っていきます。
たとえば「年収800万円」「営業職」が条件だったとしましょう。
その条件だけで求人を紹介するのではなく、条件に合った求人にプラスして、将来的に昇給しキャリアアップが見込める営業の求人も紹介することで、転職希望者に合った求人を探しやすくなります。
転職エージェントでは、非公開求人を扱っている場合も多いので、多くの企業の求人から、本当に就きたいと感じられる企業を見つけてもらうことが大切です。
求人案内では、希望にあった求人を紹介することはもちろんですが、転職希望者の気づいていない適性などを見抜くことも、キャリアアドバイザーの仕事です。
そのためには、面談で一人ひとりの強みや弱みをしっかりと理解しなければいけません。
履歴書の添削
企業の応募には履歴書が必要になるため、履歴書を確認して、添削を行っていきます。
添削では、誤字脱字はないか・誤用している言葉はないか・文章に違和感がないかなどを修正するのはもちろん、転職希望者の強みを書類上から導き出すという役割もあるのです。
また、一度目を通すだけではなく、何度も確認することで履歴書の内容をブラッシュアップできます。
キャリアアドバイザーは、業界や企業が求めている人材を正確に把握しなければなりません。
その求める人材と転職希望者がマッチするようにアドバイスをする、または一人ひとりの魅力が伝わるように、丁寧に添削していくことが重要です。
これは、キャリアアドバイザーとしての経験を積んでいくことで自然と身につけられます。
面接対策
転職希望者が応募を済ませたら、次は面接対策を行っていきます。
面接は、緊張してしまい頭が真っ白になってしまったり、不安になってしまったりする場合が多々あります。
その緊張や不安を少しでも解消してあげることが大切です。
平均30分〜60分の面接で、その企業に就けるのかの合否が決まってしまいます。
したがって十分に自分をアピールできるよう、自己紹介や転職理由・志望動機など基本的なものだけではなく、苦手な部分があれば重点的に練習を行い、自信のある面接になるよう対策をしていきます。
また本番と同じように練習をし、流れをイメージさせ、面接での声の大きさやトーン・自分では気づきにくい姿勢などにも注意できるので、面接対策はとても重要です。
キャリアアドバイザーがきついと感じる理由
キャリアドバイザーは、転職という他人の人生の転機に関わる職業です。
それと同時に、きつい仕事だといわれるケースも多く見られます。
しかし、実際にキャリアアドバイザーの仕事をきついと感じている方でも、具体的なきつさの原因がわかっていないため、効果的な対策ができていないのかもしれません。
まずは、キャリアアドバイザーの仕事がきついといわれる理由を確認してみましょう。
今回は代表的なきつさの原因を5つ紹介します。
自身の仕事で当てはまっている部分がないか、1つずつ確認してみてください。
多くの面談が18時以降
キャリアアドバイザーの仕事をきついと感じる原因の1つは、その特殊な業務時間です。
転職希望者は、現在の仕事と並行して新しい職場探しをします。
つまり、転職活動は主に終業後です。
そして、転職希望者のサポートをするキャリアアドバイザーも、その同じ時間帯に仕事をしなければいけません。
そのため、キャリアアドバイザーの仕事は、通常の会社員に比べ遅い時間帯がメインです。
一方で、始業時間は遅めに設定されているケースも多く見られますが、電話連絡や面接の設定などを転職希望者に合わせ、柔軟な対応が求められます。
このような特殊な仕事のペースに馴染めない場合、体調を崩してしまうこともあるでしょう。
キャリアアドバイザーの労働時間は、不規則になりがちであると意識したうえで、それに合わせた生活リズムを形成することが大切です。
面談後に顧客が音信不通になる
キャリアアドバイザーは求職者と真摯に向き合い、サポートする職業です。
しかし、すべての求職者が転職活動を続けてくれるとは限りません。
面接した相手が音信不通となるケースもしばしば見られ、これもまたキャリアアドバイザーの仕事がきついといわれる理由の1つです。
音信不通となる理由は求職者によりさまざまです。
キャリアアドバイザーが、面接でうまく対応できなかったため、見切りをつけられてしまうこともあります。
また、求職者との信頼関係をうまく築けていないことも、音信不通につながりやすい理由の1つです。
いずれにせよ、音信不通となった時点で、仕事はそこで中断してしまいます。
こういった事態が続くと強い無力感におそわれ、仕事に対するモチベーションも低下してしまうでしょう。
面談しても成果に結びつかない
キャリアアドバイザーにとっての成果は、求職者の転職が成功することです。
しかし、面接したすべてが成果につながるとは限りません。
この点も、自身はあくまでサポートに徹しなければいけない、キャリアアドバイザーのきついところといえるでしょう。
成果が出ない理由は、求職者とあっ旋先の相性の問題もありますが、そのマッチングをコーディネートするのもキャリアアドバイザーなのです。
キャリアアドバイザーは面接の中で求職者の潜在的なニーズやポテンシャルを引き出し、それを転職という成果に結びつけなければなりません。
自身の中で、効果的な面接のメソッドが構築できないままでは、どれだけ面接の数を増やしても成果にはつながらないでしょう。
成果を出せない状態が続けば、心身ともに疲弊してしまいます。
顧客企業と求職者の板挟みになる
キャリアアドバイザーは求職者のサポーターであると同時に、顧客企業に適切な人材をあっ旋するエージェントとしての役割もあります。
つまり求職者と顧客企業、双方の望みを叶えることが求められる立場であり、これが仕事のきつさにつながるのです。
求職者の希望を重視すると適切な会社が見つからず、企業の定める条件を厳守すると合致する人材が見つからない事態も起こり得るでしょう。
どちらかを優先しすぎると、もう片方の期待を裏切ることにもなりかねません。
そのため、キャリアアドバイザーは求職者と企業の間に立ち、お互いの希望を調整する役割が求められます。
双方の要望を100%叶えることは難しいと割り切り、妥協点を探していくことも重要になるのです。
それができなければ成果を出せず、仕事のやりがいも感じられなくなっていくでしょう。
求職者への気配りとノルマが両立できない
求職者のサポートをするキャリアアドバイザーにも、ある程度のノルマが存在します。
そのため、特定の求職者と真摯に向き合うだけでなく、一定数の成果を出さなくてはいけません。
求職者によっては、なかなか仕事が見つからず、サポートが成果につながらないこともあるでしょう。
キャリアアドバイザーには、そういった際に見切りをつけ、ほかの求職者のサポートに注力する対応も求められます。
求職者と企業の要望を100%叶えられないのと同様に、すべての求職者に寄り添い、成功までサポートすることもできないのです。
もしキャリアアドバイザーになった理由が「求職者の悩みを解決してあげたい」という思いだったとしたら、この理想と現実のギャップは仕事をするうえできついと感じるポイントになるでしょう。
キャリアアドバイザー職がきついと感じる時の対処法
ここまでは、キャリアアドバイザーの仕事をきついと感じる5つの理由を紹介してきました。
次は、それぞれの原因を解決する対処法について考えることが重要になります。
上述したきつさはキャリアアドバイザー特有の働き方や、業務内容に関わるものが多いため、仕事に慣れてくれば解決するものもあるでしょう。
しかし、ノルマの問題や成果の少なさといった課題は、自らが積極的に動いて問題解決に努めなければ、状況は好転しません。
きつい仕事にただ耐えるのではなく、自身の成長を意識して業務に取り組む姿勢が重要です。
ノルマがきつくなる前に対策する
まず重要になるのは、ノルマの存在を常に意識し、しっかり対策を練ることです。
一般的にキャリアアドバイザーのノルマは、1ヶ月や3ヶ月スパンで設定されており、これを変えることはできません。
ノルマ未達成の状態で焦りを感じて仕事をしてしまうと、さらに成果をあげられず、ノルマ達成が遠のくという悪循環に陥ってしまいます。
期限が近くなってからノルマについて考えるのではなく、週ごとにノルマの達成状況を確認し、ペースを見直しましょう。
また、ノルマの達成が難しい場合は隠したりごまかしたりせず、素直に先輩や上司に相談することも重要です。
ノルマ達成に向けた具体的な改善策は次から解説していくので、まずはノルマから目を背けず、真正面から取り組む意識をもつようにしましょう。
先輩社員の面談に同席する
まずは面談をしている先輩の様子を観察し、自分と何が違うのかを比べて見ることがおすすめです。
うまくいかない理由が自分の中にあることを自覚し、他人から学ぶことの重要性に気づくことが一番の近道と言えます。
同席させてもらう前に、転職希望者の情報を把握し、自分だったらどんな面談をするのかをイメージしておくことも重要です。
自分と先輩の面談のやり方を照らし合わせ、先輩の面談での特徴をしっかりとつかみ、先輩はどのように面談を進めていたのかを整理することで自分との面談の違いを理解でき、何がいけなかったのかを明確にできます。
また、気になった点はその日のうちに先輩に確認し、せっかくの面談の同席を無駄にしないよう注意しましょう。
自分に合ったロールモデルを見つける
転職者が音信不通になったり、成果をあげられなかったりする場合は、面接をうまく進められないことが、根本的な原因となっているケースが多く見られます。
言い換えると、自分に合った効率的な面接のメソッドを身につければ、多くの問題は解決に向かうのです。
しかしキャリアアドバイザーを始めとする人事系の職務につかなければ、面接の経験を積む機会は多くありません。
まずは経験豊富な先輩の面接を観察し、どのように相手の情報を引き出しているか確認してみましょう。
一口に面接と言っても、その進め方は多岐にわたり、人それぞれ得意なやり方も異なります。
コーチング型やティーチング型、フランクな雰囲気で会話を引き出すもの、論理的に要点を見つけるものなど、さまざまなスタイルから自分に合ったものを見つけるのが大切です。
面談数をこなしPDCAを回す
自身に合ったロールモデルが見つかったあとは繰り返し実践することが大切です。
たとえマニュアルを読み込んで面接の流れを理解しても、先輩を参考として自身に合ったロールモデルが見つかっても、それを自分の技術として身につけるには、実際に面接を重ねなければなりません。
ここで重要となるのは、ただひたすら回数をこなすのではなく、PDCAサイクルを回していくことです。
計画、実行、評価、改善という4つのプロセスを意識し、面接1回ごとに、現状の課題と解決策を考えてみましょう。
回数を重ねながらそれぞれの面接を評価していくことで、自身にあったやり方も、より明確に見えてきます。
このように少しずつ改善を積み重ねていけば、面接それ自体が成長のきっかけとなり、自身の変化も実感しやすくなるのです。
それでもきつい場合は転職を考える
ここまではキャリアアドバイザーのきつさを乗り越え、効率的に仕事を進めるための対処法を紹介してきました。
しかし仕事との相性は人それぞれです。
合わない環境で無理に働き続けることは、心身に大きな負担となります。
体調を崩して退職することになれば、復帰が遅くなってしまう可能性もあるでしょう。
もしどうしても今の仕事が合わないと感じた場合は、転職も視野に入れることが大切です。
そこで次はキャリアアドバイザーが転職する際の、仕事選びのコツについて解説しましょう。
キャリアアドバイザーからのおすすめの転職先
キャリアアドバイザーから転職する場合、転職先は同業他社だけでなく、異業種や異業界も候補として考えられます。
自身がキャリアアドバイザーとして、積み上げたキャリアをそのまま活かしたい場合は、同業他社が有力候補となります。
しかし、キャリアアドバイザーの仕事自体が合わないと感じているなら、これは解決策にならないでしょう。
一方、異業種や異業界への転職は、自身がもっているキャリアとのズレが発生するので、それをどのように埋めるかが大切になってきます。
いずれの場合も「今の仕事から抜け出す」という後ろ向きな目的だけでなく、今後のキャリアプランをしっかり想定して、転職先を選ぶことが重要です。
転職先やその先の人生設計など、あらゆる可能性を考え尽くしてから転職に踏み切ると良いでしょう。
同業他社の場合
同業他社への転職とはつまり、キャリアアドバイザーを続けつつ、働く場所だけを変えることです。
キャリアアドバイザーの仕事に対しては熱意を感じていながら、待遇や成果といった面で不満を感じている場合、有力な選択肢となるでしょう。
業務内容や得意分野が似通っている競合他社へ転職するのであれば、現在のキャリアをそのまま活かすことが可能です。
一方で、製造業特化など強みとする業界軸が異なっている企業、営業職特化など強みとする職種軸が異なっている企業へ転職すれば、異なった知識やアプローチが必要になってきます。
またキャリアアドバイザーには求職者との面接やヒアリング業務、企業の採用問題解決と人材紹介業務という2つの側面があります。
どちらか片方だけを担当する片面型、双方を担当する両面型が存在し、それぞれ働き方も異なってくるので、企業選びの際は注意してみると良いでしょう。
CAの経験を活かせるおすすめの職種・業界
次はキャリアアドバイザーから異業種、異業界に転職するケースを考えてみましょう。
同業他社以外に転職する場合、キャリアアドバイザーとして働いたことでどんなスキルを身つけたかが重要になります。
キャリアアドバイザーは、転職者と企業の橋渡しをする職業であり、そのメイン軸となる業界は人材紹介、業種は営業です。
この2つのポイントを意識すれば、仕事を変えてもキャリアアドバイザーとしての経験を活かせるでしょう。
ここからはキャリアアドバイザーの経験を活かしやすい業種、業界を紹介します。
無形商材業界の営業職
キャリアアドバイザーは、転職者という無形商材を企業へ売り込む無形営業と表現できます。
そのため、同様に無形商材を扱う営業職に就けば、キャリアアドバイザーの経験を活かしつつ、軸をずらさない転職が可能です。
具体的には人材系の会社などが有力な候補にあがるでしょう。
人材系のサービスとしては、各企業に適切な人材を派遣する派遣会社、求人広告を掲載し、人材を集める就職サイトの運営会社などが該当します。
それぞれ業務内容や成長率は異なるので、十分に情報収集をして適切な企業を選んでみてください。
人事職
人材を専門に扱ってきたキャリアアドバイザーは、人事職としてもスキルを活かすことが可能です。
特に、採用業務では豊富な面接経験を大いに役立てられるでしょう。
場合によっては、キャリアアドバイザーとして働く過程で顧客企業から引き抜かれ、人事職へ転職するケースも見られます。
人事職へ転職する際に注意しておきたいのは、キャリアアドバイザーの経験を十分に活用できるのは、あくまで採用に関する業務だけということです。
人事職は採用業務以外にも、人材評価や人事戦略の立案、労働環境の管理といった業務も担当しなくてはいけません。
そのため転職後は速やかに人事職のノウハウを学び、同僚にキャッチアップしていく姿勢を求められます。
経験を活かしつつ新たな学びを得たい場合は、良い選択肢となるでしょう。
教育業界
人材の長所を引き出し適切な方向に進むサポートをする点で、キャリアアドバイザーと教育に関する職業には共通点があります。
そのため教員や塾講師、学校職員といった教育業界の仕事も、キャリアアドバイザーから転職する候補の1つとなるでしょう。
一方、教員を選ぶ場合は資格の取得が必要になり、それ以外でも大きなキャリアプランの変更を余儀なくされます。
自身がキャリアアドバイザーになった目的、将来どんななキャリアを積んでいきたいかを考え、転職するかどうかを決めるのが大切です。
「人と深く関わっていきたい」という動機で人材業界に入った場合、教育業界はその志を果たせる場所の1つとなります。
20代などの若い年齢であり、教育業界でも自身の夢が叶えられると考えるのであれば、キャリアチェンジも可能です。
まとめ
キャリアアドバイザーは転職者の気持ちに寄り添いつつ、自身のノルマをこなし、成果をあげることが求められる職業です。
遅めの業務時間や頻繁な面接など、ほかの仕事にはない特徴も多いので、慣れないうちはきつさを感じるかもしれません。
仕事を効率的に進めるためには先輩たちの面接から学び、積極的にスキルを高める姿勢が重要です。
キャリアアドバイザーの経験を積むことで身につく技能としては、人材という無形商材を扱う営業スキルなどがあげられます。
異業種や異業界に転職する際は、このスキルが活かせる企業を選んでみてください。