はじめに
社会人になると、仕事をするうえで身につけておくべきマナーがたくさんあります。
今回のテーマである、電話応対のマナーもその1つです。
この記事をご覧になっている方の多くは、企業に就職したばかりの新人営業マンだと思います。
これまでに電話応対の経験がなく、不安に感じている方も多いことでしょう。
営業職にとって、電話応対のマナーは企業の印象や業績を左右する可能性もある重要なことです。
この記事では、新人営業マンの皆さんにぜひ知っておいてほしい電話応対のマナーについて、電話をかけるときと受けるときに分けて解説します。
また、電話応対において気をつけるべき言葉遣いについても解説しています。
ぜひ最後までご覧ください。
営業で電話をかけるときのマナー
営業における電話応対のマナーとは、単に言葉遣いだけ気をつけておけばいいというものではありません。
こちらから相手の取引先へ電話をかけるときや、相手から電話を受けるときのそれぞれにマナーがあります。
たとえばこちらから電話をかけるときには、「社名と自分の名前を名乗る」、「用件は簡潔にする」、「かける時間帯に注意する」などのマナーがあるのです。
ここではこのような「電話をかけるときのマナー」について具体的に解説します。
正しい電話のかけ方を学ぶために、ぜひ参考にしてください。
社名と自分の名前を名乗る
相手に電話をかけるとき、社名と自分の名前を名乗ることは、ビジネスマナーにおいて基本中の基本です。
社名と自分の名前をはっきりと伝えた上で、相手がいるかどうかを確認してください。
例)
「〇〇(会社名)の〇〇(自分の名前)と申します。
いつもお世話になっております。
〇〇部(相手の所属部署)の〇〇様(相手の指名や肩書き)はいらっしゃいますでしょうか?」
相手が電話に出たら、もう一度社名と名前を名乗ってから用件を伝えるようにしましょう。
また相手の連絡先が携帯電話の場合でも、社名と自分の名前を名乗り忘れないでください。
用件は簡潔にする
用件を簡潔に相手に伝えることは、電話応対のマナーとしてとても大切なことです。
伝えたいことがまとまっていない状態で長々と話してしまうと、相手の貴重な時間をうばうことになってしまいます。
また電話をかける側も、電話応対に無駄な時間を費やすことになってしまうでしょう。
相手にとって不快でなく、かつ自分にとっても効率的な電話応対ができるように心がける必要があります。
電話をかけた目的や相手へ伝えたい内容を、あらかじめメモにまとめておいて、簡潔に伝える準備をしてから電話をかけると効率的です。
もしも電話が長くなりそうな場合は、「〇分ほどお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」と、事前に相手の都合を確認する配慮も必要です。
電話が終わったら指で電話を切る
卓上電話の場合、電話を切るときに雑に受話器を置く、いわゆる「ガチャ切り」は重大なマナー違反なので、決してしてはいけません。
「ガチャン!」と大きな音をたてて受話器を置くと、相手の耳に直接その音が届いてしまい不快な印象を与えてしまいます。
指でフックを押してから受話器を置くと、切るときの音は立たなくなるので、相手へ丁寧な印象を与えられます。
電話をかけるべきではない時間帯
電話応対のマナーとして、かける時間帯に配慮することはとても大切です。
相手に電話をかけるべきでない時間帯は、「朝一番」「昼休み」「営業時間外」「終了間際」などです。
始業から1時間ほどの間は、朝礼や申し送りなどで忙しいことも多い時間帯のため注意しましょう。
たとえば9時始業の会社であれば、10時以降に電話をかけるのが無難でしょう。
昼休みに電話をかけることは、相手の貴重な休憩時間をうばってしまうことになるので避けるべきです。
また、営業時間外や終了間際に電話をかけるのも、相手に対して失礼なので避けましょう。
急を要し、どうしても上記の時間帯にやむを得ず電話をかける場合は、一言お詫びの言葉を添えるようにしましょう。
例)「朝早くから申し訳ありません」「お昼休みのところ恐れ入ります」など
事前にできる準備はしっかりする
用件を簡潔に伝えるために、話す内容を事前にスクリプト(台本)にしておきましょう。
メモ帳と筆記用具は必ず手元に用意しておき、相手からの要望などを書き留められるようにしておいてください。
また、電話をかける相手の社名や所属部署名、役職名や名前の読み方など、先方の基本情報はきちんと確認しておいてください。
事前に確認しておくと、電話口でのもたつきや呼び間違いを防げます。
きちんと準備をしたうえで電話をすれば、精神的にも余裕をもてるでしょう。
電話を受けるときのマナー
電話をかけるときと同じように、受けるときにもマナーがあります。
たとえば「電話は3コール以内に取る」、「もしもし、と言わない」などがそれにあたります。
新人の営業マンにとって、電話をかけるときと同様、受けるときにもとても緊張するものです。
電話受付の担当者でなくとも、営業部宛にかかってきた電話に出るケースはあるので、営業マンは基本のマナーを身につけておくべきでしょう。
ここからは電話を受けるときのマナーについて具体的に解説します。
ここを参考にして電話を受けるときのマナーを身につけ、堂々と電話に出られるようになっていただきたいと思います。
3コール以内に取る
電話がかかってきたら3コール以内に出るのは、一般的なビジネスマナーとされています。
3コール以内に電話に出てもらえないと、かけた人からすると「待たされている」と感じてしまうケースが多いのです。
電話に出るのが遅いと、クレームに発展するとまでは考えづらいですが、社員教育ができていない会社だと思われる可能性はあります。
また大事な商談の連絡なのに、相手が待ちきれずに電話を切ってしまい、大きなチャンスを逃してしまう、といったことも起こりかねません。
会社の印象や業績にもつながることなので、ぜひ電話は3コール以内に取ってください。
もし3コール以上鳴ってしまった場合は、「大変お待たせいたしました。○○株式会社、○○でございます」と一言お詫びの言葉を添えるようにしましょう。
「もしもし」は使わず「お電話ありがとうございます」から始める
電話を受けるときの注意点として、会社に電話がかかってきたときは「もしもし」と言わない、というマナーは必ず覚えておいてください。
「もしもし」を使うのは、ビジネスマナーにおいてはNGとされています。
不用意に使ってしまうと、相手に対し失礼な印象を与えてしまうので要注意です。
先方から電話がかかってきたら、「お電話ありがとうございます。〇〇(会社名)の〇〇でございます」といった具合で、明るく電話に出るようにしてください。
相手の社名・お名前を繰り返す
電話を受けたときに会社名と自分の名前を名乗ると、通常は相手も会社名と名前を伝えてくれます。
このとき、相手が名乗り終わったら必ず復唱するようにしてください。
復唱すれば、相手の会社名や名前の聞き間違いを防げます。
このとき同時にメモを取っておくと「うっかり忘れてしまった」という事態を回避できます。
いつでもメモが取れるように、メモ用紙と筆記用具は手元に準備しておきましょう。
また復唱の際に「〇〇(会社名)の〇〇(相手の名前)様でございますね」と言う方もいますが、これは間違いです。
「ございます」は自分に対して使う丁寧語なので、相手のことを言うのには不適切です。
こちらが相手のことを言うときは、「いらっしゃいますね」を使うのが正しい言葉遣いなので、ぜひ覚えておいてください。
取り次ぎは一度保留をする
受けた電話の内容によっては、別の人に取り次ぐ場合もあると思います。
そのときは、「〇〇でございますね。少々お待ちください」と返答し、電話を保留にしてください。
保留をせずに相手を待たせてしまうと、周囲の雑音が聞こえるので不快な思いをさせてしまいます。
近くにいる人に取り次ぐ場合でも、必ず保留にしましょう。 また、保留にする時間は基本的に30秒程度といわれています。
取り次ぎに30秒以上かかるようであれば、「こちらから折り返しお電話を差し上げます」などと伝えましょう。
「相手の時間をうばってしまう」という意識をもち、必要以上に待たせないようにすることが大切です。
自分で対応できない場合は、一度確認する旨を伝える
かかってきた電話の内容が、自分だけでは解決できず、誰かに相談する必要のある場合もあるでしょう。
そのような場合、一度確認を取りたいという旨を相手に伝えることが大切です。
自分だけでは判断できない内容について、誰にも相談せず曖昧な返答をしてしまうのは大変失礼です。
「恐れ入ります。その件については確認が必要なので、少々お時間をいただきたいのですが、折り返しお電話を差し上げてもよろしいでしょうか?」と、
一度確認したい旨をしっかりと相手に伝えましょう。
個人情報は口外しない
電話をかけてくる相手の中には、携帯電話の番号など社員の個人情報を聞き出そうとしてくる人もいます。
そのような人達の中には、取引先を装って個人情報を抜き出し、悪用しようとする者もいるでしょう。
個人情報の漏えいは、会社全体の損失につながる恐れもあります。
携帯電話の番号や社員の名前など、社内の個人情報にあたることは決して相手に教えてはいけません。
怪しいと思った場合は、「本人に確認したうえで、必要な場合は折り返しご連絡を差し上げます」などと伝えましょう。
電話でよく使う敬語表現
営業マンにとって、取り引きや接客をするうえで正しい言葉遣いは必須だといえます。
これは電話応対においても同様です。
敬語は相手を敬う丁寧な言葉遣いであり、ビジネスマナーにおいて欠かせないものです。
正しい言葉遣いができなければ、相手に不快な印象を与え、信頼関係を失ってしまうことになりかねません。
ここからは電話でよく使う敬語表現について解説していきます。
正しい敬語の使い方を身につけ、相手から好感をもってもらえるようにしましょう。
相手に関連するものは尊敬語を使う
尊敬語は、相手のことを直接立てて、敬意を表すために使う言葉です。
相手や相手の所有物、考え方や行動など、相手に関連するものが主語の場合に使います。
これらを敬う場合には、「お」「ご」「御(おん)」などの接頭語をつけましょう。
たとえば、相手の会社のことについて言う場合は、「御社」と言います。
尊敬語の例
尊敬語は、主に次の3つのグループに分類されます。
①尊敬の意味を表す「お・ご・御・貴」などの接頭語を名詞につけるグループ
(例)
「本日はお電話いただきありがとうございます」
「お忙しい中、恐れ入ります」
②それ自体が敬語の意味を表すグループ
(例)
おっしゃる(「言う」の尊敬語)→「〇〇様がおっしゃいますように・・・」
いらっしゃる(「行く」「来る」の尊敬語)→「本日は何時ごろこちらへいらっしゃる予定でしょうか。」
召し上がる(「食べる」「飲む」の尊敬語)→「どうぞ、召し上がってください」
③「れる・られる」「ご(お)…になる」などを付け加えるグループ
(例)
「こちらの資料をお読みになってください」
「〇〇様は、何時ごろお戻りになる予定でしょうか」
自分に関連するものは謙譲語を使う
謙譲語は、自分や自分の会社、所有物、考えや行動を主語にする場合に使います。
自分をへりくだり、相手のことを間接的に高める言い方のことです。
自分のことや自分の所有物などをへりくだる場合は、「弊」「拙」「小」などの接頭語をつけましょう。
たとえば、自分の会社のことについて言う場合は、「弊社」「小社」と言います。
謙譲語の例
謙譲語は、主に次の3つのグループに分類されます。
①謙譲の意味を表す「弊・拝・愚・ども」などの接頭語、接尾語をつけるグループ
(例)
「資料を拝見いたします。」
「私どもの考えは〇〇〇〇でございます。」
②それ自体が謙譲の意味を表すグループ
(例)
いただく(「もらう」の謙譲語)→「さっそく、資料を送らせていただきます。」
伺う(「行く」「来る」の謙譲語)→「それでは、明日の〇時にそちらへ伺います。」
存じる・存じ上げる(「知る」の謙譲語)→「その件については存じ上げております。」
③「お…する」「ご…いただく」などを付け加えるグループ
(例)
「明日、こちらからあらためてお電話いたします。」
「折り返しご連絡いただき、ありがとうございます」
全体を通して丁寧語を意識する
丁寧語は、話し手が自分の言葉を丁寧に言うことで、聞き手への敬意を示す言い方です。
語尾に「です」「ます」「ございます」をつけたり、名詞に「お」「ご」をつけたりします。
ビジネスシーン全体にいえることですが、電話のやりとりにおいても、常に丁寧語を意識して相手と会話することが大切です。
丁寧語を適切に使えば、相手からの印象をよくすることも可能でしょう。
電話でよく使う言葉
これまで紹介した敬語表現以外にも、電話応対でよく使われる言葉があります。
代表的なものをいくつか紹介するので、ぜひ参考にしてください。
・アポ
これは「アポイントメント」の略で、英語のappointomentがもとになっています。
面会の約束や予約の意味があり、社内外の人との約束に対し予定が取れているかを確認するときによく使われます。
・「明日」「明後日」
通常、これらの言葉は「あす」「あさって」と読みます。
しかし電話応対では「みょうにち」「みょうごにち」と読むのがマナーとされています。
ほかにも、「今」は「ただいま」「現在」、「今日」は「本日」と言い換える必要があるので、覚えておきましょう。
・担当者が帰ってしまったときの表現
このような場合は、「あいにく本日は失礼させていただきました」と言いましょう。
「退社しました」という表現は、帰宅以外に退職の意味も含み混同されやすいので、避けたほうがいいでしょう。
まとめ
ここまで営業における電話応対のマナーについて解説してきました。
電話をかけるときや受けるときの応対の違いや、尊敬語・謙譲語などの言葉遣いなど、覚えるべきマナーはたくさんあります。
一つひとつを身につけるのはとても大変な作業ですが、このようなマナーを知っているかどうかで、営業マンとしての成績は大きく左右されるでしょう。
今回の内容をぜひ参考にしていただき、堂々と電話応対ができる立派な営業マンになっていただきたいと思います。